経済時系列と季節調整法

摘要

数カ月おきにGDP (国内総生産)値が新聞·テレビなどで大きく報道され、株式市場などへも影響が及ぶ経済データとなっている。報道される数値は季節調整済み系列の前期比、年率換算値(四半期データのほぼ4倍)であるが、この系列の信頼性についての報道は少ない。経済動向についての判断、様々な政策判断を行う関係者はその判断の根拠となる数値が統計演算により作られ、誤差を伴うことを理解しているとは言い難いのである。近年では統計的に推定された数値にはカッコで標準誤差を付記することが統計学では常識であるが、季節調整による公表値では常識となっていない。時間的経過とともに観察される多くの経済時系列では季節変動が観察される。生産、投資、消費、貨幣量といった時系列の季節的変動は古くから注目され、統計的時系列分析を利用して1950年頃から様々な季節調整法が開発されている。原系列データにどう季節調整をかけたらよいか、この統計相談へ丁寧な答えを用意している書物は多くない中で一石を投じるのが高岡慎「経済時系列と季節調整法」である。