平成21年度　日本水環境学会学術賞受賞者

摘要

原田秀樹氏は，一貫して下廃水等の嫌気性処理プロセスの開発に携わってきた。近年，バイオマス・リファイナリーのための中核技術として，有機性下廃水・廃棄物からのバイオマスエネルギー回収利用技術の重要性が増してきている。原田氏は，この分野で先駆的な役割を常に担ってきている。原田氏の研究成果がとくに優れている点としては，廃水・廃棄物の嫌気性処理技術＝メタン発酵プロセスの開発を，単に工学的な装置開発だけでなく，嫌気性微生物生態の分子生物学的解析のファンダメンタルな研究課題まで，常に重層的に展開していることである。　原田氏の高速メタン発酵プロセスの開発における研究業績は顕著である。新規の多段型UASB反応器を開発し，高濃度有機性廃液（焼酎蒸留粕）に適用したオンサイト・パイロットプラントでは世界最高速度のメタン発酵処理プロセスを 実現した。この技術は，焼酎蒸留粕のみならず，他のアグロインダストリー系の濃厚廃液やバイオマスへの汎用性も高く，環境省の環境技術開発等推進費事業では戦略指定研究に指定され，CDM適用技術としてマレーシアなどのアジア圏への技術移転も展開中である。