ァ才コ形成シァノバクテリアMicrocystis属におけるゲノム解析の研究動向と環境遺伝子モニタリング

摘要

ァォコとはシァノバクテリァが大増殖し，淡水湖沼などの水面が粉を吹いたように青緑色になる現象のことである（図1）。ァォコを形成するシァノバクテリアには，複数の属が知られているが,その中でもMicrocystis属は淡水湖沼において，最もよく知られたァォコ形成シァノバクテリアのひとつである。本属は，単細胞で存在，もしくは単細胞が集まったコロニーと呼ばれる細胞群体を形成し，細胞内にガス胞と呼ばれる小胞を持つことで水面に浮遊する能力を有する。一般的に水温25 °C以上でァォコを形成することが知られており人気候変動による地球温暖化の影響で，将来的に現在よりもァォコの発生頻度が高くなることが予測されている。Microcystis属によるァォコの発生により，悪臭や湖底の酸欠などさまざまな環境問題が生じるが，一番の問題はMicrocystis 属の一部がミクロキスチンと呼ばれる肝臓毒を産生する ことである。淡水湖沼等において，この毒が細胞外に放出され，淡水生態系やその水を利用する人の健康に深刻な影響を及ぼすことが知られている。日本において，高度経済成長期に社会問題になったァォコ問題は，現在ではその当時と比べれば大きな環境問題になっておらず，多くの人々にとつて過去の環境問題のように感じられるかも知れない。しかしながら，シァノバクテリアは高温の水温をより好むため，将来的に地球溫暖化が進むとァォコ問題は日本に住む我々にとつても避けられない問題になる可能性がある。世界的にも，衛星を用いてリアルタイムでァォコを観測するといつた新たなモニタリング法の開発も進められている'"。また，次世代シーケンサーの普及により，低価格で迅速に微生物の遺伝子解析や全ゲノム解析が行えるようになったことで，Microcystis属においても近年さまざまな知見が得られつつあり，遺伝子解析を用いた新たなモニタリング方法の開発も進hできた。本稿では，とくにゲノム（遺伝子）解析を用いたMicrocystis属における最近の研究動向にっいて，筆者が行つている環境遺伝子モニタリングの実例も含めて紹介する。