2020年度(公社)日本水環境学会 会長特別賞受賞者

摘要

三浦郁修氏は，自身の研究テーマ「疫学調査および微生物データに基づく潜在的な感染症拡大の統計的推定」に関して，特筆すべき研究成果を挙げ.その成果を多数の論文·国際会議等にて発表を行い，きわめて高い評価を得ている。東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻所属時の同氏の研究では，感染症制御に向けた病原体伝播リスク解析を行うべく，環境工学で発展してきた微生物リスク評価手法と公衆衛生分野で発展してきた理論疫学モデルを横断する，複数の数理手法を構築した。第ーの成果として，病原体がヒト個体内で感染を成立させる確率過程と，ヒト個体同士の相互作用の中で感染拡大が生じるプロセスとを繋ぐ新たな数理モデルを構築した。さらに第二の成果として，水中微生物に関わる研究において集積されてきた病原微生物のゲノム情報や微生物リスク評価手法として蓄積されたデータが，より迅速で高精度な流行の予測や，環境工学的な疾病制御の貢献へ繋がることも明らかにしている。これらの研究成果は.すでに第52,53,54回日本水環境学会年会において，さらには第19,20回IWA Health Related Water Microbiology (North CarolinaおよびVienna)およびIWA World Water Congress & Exhibition 2018 (Tokyo)において口頭発表され，高い評価を得ている。同氏の独創的視点と卓越した研究能力は，感染症抑制のための社会システム実現を目指す当該学術研究分野の発展にー層寄与するものと期待されるものでめる。