小さな数理モデルが地方環境を救う！？: 政策に直結するモデルづくりの基礎と応用

摘要

一般に数理モデル（以下「モデル」という。）とは，「対象のふるまいに特徴的な法則性を見いだし，それを約束された形式（多くの場合は数式）に表現すること」と定義できる。しかし一言でモデルといっても，それが指す内容は様々である。以下で主に解説する微分方程式を使つたモデルもその一つであるし，統計モデルやグラフ理論，ゲーム理論，AIへの活用で流行の機械学習などもモデルである。水環境の分野では，実験室やフィールドで観測されたデータをもとに，現象を説明あるいは予測する手段としてモデルを用いることがある。なかでも地方環境研究所（以下「地環研」という。）は，地方自治体が実施する施策との関係が密接であるため，水環境に関連する何らかの問題の要因を解明したり，将来予測を行ったり，対策を行ったときの効果を推定することが求められる場面が多く，このようなときに有用なのがモデルである。