先端技術開発特集によせて

摘要

「創造的人生の持ち時間は10年。君の10年を力を尽くして生きなさい。」宮崎駿監督の映画「風立ちぬ」の中で技術者になろうとする主人公があこがれの先達から語られる言葉である。時間については諸説あろうが，個々の技術者•研究者がそれぞれ有限の時間の中で，力を尽くした仕事を残していくことには違いない。科学的アプローチを元に何事かをなし得る技術を大学で学んだ研究者のうち，それを活かすフィールドとして企業を選んだ技術者は，その技術が目に見える形として社会に貢献できる製品を世に出すべく，悪戦苦闘する。成功を収めたものもあれば，断腸の思いで中断したものもある。昨年で140周年を迎えた島津製作所の記念誌を読みながら，その歴史にしばし思いをはせた。時代の変遷はあるものの，リアルな情景として過去の開発現場を思い浮かべることができるのは，研究開発に取り組む姿勢が普遍的であることとともに，そのような歴史を繰り返してきた「島津のDNA」なるものが存在するためだろうか。