白保竿根田原洞穴遺跡はどのようにできたか：堆積環境と形成過程

摘要

石灰岩中に形成された洞窟(石灰洞)からは，動 物化石骨が豊富に産出することがよく知られてい る。日本の一般的な地域では酸性土壌を主体と するため埋没した化石が残りにくいのに対して， 石灰岩地帯は弱アルカリ性環境が卓越するので， 洞窟の中では状態の良い骨化石が保存される。こ のような保存の好条件に加え，化石を含む洞窟堆 積物は地表におけるような風化と侵食を受けない ことも化石の産出の可能性を高くしている。石灰 洞の多く分布する本州の石灰岩地帯は古生代の地 質体を中心に認められるガ，南西諸島では新生代 第四紀の隆起サンゴ礁として分布する。一般に古 生代の緻密な石灰岩に比べて第四紀の隆起サンゴ 礁の石灰岩は不均質で孔隙に富み，洞窟空間の拡 大が進みやすく，大規模で美しい鍾乳石が発達す るのが知られている。また，この地域の洞窟は新 しい隆起サンゴ礁であることを反映して地表近く で発達するため，地盤の陥没や土壌などの流入も 頻繁に起こる。こうした石灰洞は主として地下水 面下で炭酸力ルシゥムに不飽和な水によつて石灰 岩が溶食されて形成される。したがって，石灰岩 の岩質や透水性，地下水面の位置などの水文環境 は洞窟の形成や堆積物の保存に大きく関わる。