仁科芳雄とボーァの相補性原理

摘要

仁科芳雄(1890-1951)は，日本の現代物理学の父などとも呼ばれる人物である。1920年代，量子力学という新しい物理学が生まれてきた時期にョー口ッパに留学し，その中心地であったコペンハーゲンなどで研鑽に励んだ。デンマークの首都コペンハーゲンには，この時代を代表する物理学者であるボーァの研究所があり，日本を含む諸外国から多くの研究者が滞在していたのである。帰国後は，仁科は理化学研究所の主任研究員となり，1930年代から40年代にかけての原子核物理学を主導する存在となった。