免疫遺伝子MHCの違いで配偶者選択

摘要

生物が配偶者を選ぶ際に重視するもの。その選考性がどのように進化するのかは、進化生物学における謎の一つだ。配偶者の選好性、すなわち性選択を理解するには、ある形質を選ぶ個体の適応度上の利益と遺伝的変異が維持される機構を解明する必要がある。ダーウィン以来、進化生物学者は様々な動物の性選択に関わる形質について研究してきた。体の大きさや色、求愛行動などは、古くから注目されてきた配偶者の選択の指標だが、近年注目されているのが遺伝子に基づく機構だ。脊椎動物の免疫システムに関係する主要組織適合遺伝子複合体(MHC：Major Histocompatibility Complex)はその代表例だといえる。多様なMHCを持つことで免疫能力が高くなり、病原体や寄生虫に対する耐性の範囲が広がる。MHCによる配偶者選択は、免疫機能の優れた適応的な仔を残すという間接的利益を生じさせると考えられている。