無意識センシングで究極の予備診断を

摘要

体のどこかに疾患につながりそうな問題が起こると自動的に教えてくれる、普段と同じように装着するだけで高精度に生体情報を連続して得ることができるセンサ。そんな夢の道具ができあがったら、社会はどう変わるのか。三林教授は、負担が少なく安全で、着脱可能な『生体融和デバイス』の開発に取り組んでいる。近年、物理量を測れるウェアラブルな装置が話題になっているが、三林教授らが狙うのは、ウェアラブルと、ぺースメーカーなど患者のためのインフランタブルな医療デバイスの間。涙嚢(涙道の一部)や腔、口腔、咽頭腔を計測対象部位にした『キヤビタス·センサ』の構築を進めている。「キヤビタスはギリシア語で空間を意味します。コンタクトレンズやマウスピースなど、すでに社会が受け入れている道具に生体情報を計測できる装置を付加することで、速やかな普及が期待できます」涙から血糖値を測ることを目指しているソフトコンタクトレンズ型センサは、素材に生体適合性の高い高分子ポリマーを利用している。また、計測や通信をするための装置と接続する電極は薬品を使わずに成膜するなど、生材研が開発した安全な材料·技術を利用している。「このセンサは、ずっと眼に入れておくので連続的に血糖値の計測ができます。涙から糖をモニタリングできるのは世界中で私の研究室だけ。従来、血糖値は尿や血液を使って計測していましたが、涙であれば患者さんの負担も軽い。まぶたの裹からは、血中のガス(酸素や二酸化炭素)も測ることもできます。動物での実験を続けています」。