矯正歯科用の画期的材料骨膜下デバイスに期待

摘要

リン酸カルシウムの一種である水酸アパタイト(HAP)は、人工骨や人工歯根として幅広く利用されている東京医科歯科大学発の生体材料だ。現在では、HAPの発展型となる水酸アパタイト/コラーゲン骨類似ナノ複合体(HAp/Co1)が物質•材料研究機構(NIMS)との共同研究により開発され、企業による実用化が目指されている。医歯学総合研究科顎顔面矯正学分野の森山啓司教授、生体材料工学研究所医歯工連携実用化施設の高久田和夫教授らは、HAp/Colをコー•ティング材とした、矯正歯科用の画期的なデバイス開発を行っている。矯正歯科では、噛み合わせの異常などを解消するため、力を加えて徐々に歯を移動させたり、歯の成長を制御したりする。力をかけるための固定源は、歯であったり、頭部全体に及ぶような器具を用いていたが、動かしたくない歯まで動いてしまったり、器具の使いづらさなどに問題があった。現在は、口腔内の骨に小径の金属製スクリューを埋入して固定源とする手法も進展しているが、スクリューにより歯根や骨自体の損傷を招いたり、神経や血管を傷つける可能性があった。