ナナフシの子孫拡散法卵ごと鳥に食べられて長距離移動

摘要

一部の植物は鳥に食べられることで、その種子を遠くへ運び、植生範囲を拡大している。しかし、昆虫は鳥に食べられたら、子孫もろとも生存の機会を失ってしまう。こうした常識が通じない昆虫がいた。神戸大学大学院理学研究科の末次健司特命講師、高知大学総合科学系生命環境医学部門の伊藤桂准教授、東京農工大学大学院農学研究院生物生産科学部門の横山岳准教授らの研究グループは「昆虫が鳥に食べられた場合、昆虫体内の卵は消化されずに排泄される場合があるのではないか」との仮説を立て、この仮説を検証したところ、硬い卵をもつことで知られているナナフシの卵を鳥に食べさせると、一部の卵が無傷で排泄され、ふ化するという結果を得た。昆虫が鳥に捕食されると例外なく死に至るという常識を覆すものだ。ナナフシのように移動能力が低い昆虫では、鳥による捕食が分布拡大を促進する要因になりえる。国際誌Ecologyに29日オンライン掲載された。