音環境に着目した保育施設の実態調査

摘要

This study aims to investigate the current situation of acoustical environment of nursery facilities via a field survey conducted at twelve nursery facilities. In the survey, the division of spaces of each age, dimensions and finishes of rooms, and children's activities were observed. Moreover, the background and characteristics of each facility, users' evaluation of facilities, and evaluation on the acoustical environment in nursery rooms were investigated. Additionally, noise level and reverberation time were measured in four facilities and management method to maintain comfortable sound environment were observed in one facility. On the basis of the results, the requirements for improving the acoustical environment of nursery rooms were considered.%現在、女性の社会進出や労働環境の変化などに伴う保育ニーズの高まりを受け、各地に保育施設が増設されている。保育室は、乳幼児が生活の場として長時間を過ごす空間であり、聴力·言語能力·心身の発育や知識の獲得のための環境、午睡·食事などの生活行為を支えるための環境としての整備が求められる。音声言語の獲得の面では、乳児期は母語獲得に必要な言語音知覚の基礎を獲得していく時期、幼児期は言語の音素体系に基づいた音の知覚と生成を徐々 に完成させていく時期であり、雑音·残響環境の影響を受けやすいと言われている。また、乳幼児期は周囲の環境音の中から必要と する音響情報を抽出してそれを理解していく聴覚スキルも未熟な段階にあり、海外では「乳幼児期の子どもは可能な限り最高の音響条件を必要としている」という認識のもとに音響性能の基準が示されている例もある。睡眠時の騒音による睡眠の質の低下は、子どもの能力の発達や免疫力に影響するとの報告もある。しかしながら、保育園の設計·運用においては音環境保全の必要性が一般に認識されておらず、暄騷感が非常に高い状況があることが、国内外の既往研究において報告されている。子どもにとって良好な環境はおろか、聴覚保護を目的とした労働環境の許容限度に迫る騒音環境でもあることが指摘されており、保育室の音環境保全は重要な課題となっている。