陽子の中をつぶさにみる

摘要

原子核をつくる陽子や中性子は，クォークとよばれる素粒子からできている。クォークは6種類あり，それぞれに対応する「反粒子」(通常の粒子に対して，電荷などの正負が逆の粒子)である「反クォーク」の存在も知られている。たとえば陽子は2個のアップクォークと1個のダウンクォークからなる。ただし実際の陽子の中はこのような単純なものではない。クォークどうしを結びつける「グルーオン」とよばれる素粒子が飛びかっていたり，クォークと反クォークの対が生成されたり消滅したりといった，複雑な現象がおきている。これまでの研究では，陽子の中の反アップクォークと反ダウンクォークのうち，とくに運動量が大きいものについては，存在割合が等しいのかどうかわかっていなかった。