煉瓦壁の保存改修の経緯と課題

摘要

一連のアイビースクェアのリニューアルに当たって.煉瓦壁による景観を崩すことなく民間事業べースに乗るコストで耐震性能を向上させることが課題であった.また，組積構造は建築基準法で認められていないので，京都工芸繊維大学の金尾研究室の協力を得て，ERIの安全性評価を受けることとした.前回のアイビーエメラルドホール（本誌1811)の調査過程の中での具体的な事例として，通常は煉瓦壁を構成する目地の強度を測定し，煉瓦壁の面外曲げ耐力を算定する方法をとるが，増築で不要となる煉瓦壁を用いた実物破壊試験を行ったところ，たまたま設定ミスから治具が破壊するほどの壁反力を受けたことで，壁を構成する煉瓦同士の相互作用によって平面内のアーチ効果が発生することに気づいた.それ以降，一定の面積範囲で周囲が拘束された煉瓦壁が面外方向のカに対し復元力を有することを活用し，より簡易な補強方法を開発することが目標となつた.