前臨床MRIを用いた神経画像法の開発と臨床応用

摘要

何かモノをつくるとき，それがどのような働きをす るかを理解することは，それを世の中に出すうえで極 めて重要なプロセスである.磁気共鳴画像法(magnetic resonance imaging: MRI)は，1973年，Lauterburによって開発され,そ の翌年には，マウスを用いたMRI実験により生体内 部が初めて可視化された.その後，さまざまなMRI 技術が生み出されているが,中枢神経系に注目する と，1990年，Ogawaらは，吸入麻酔濃度，酸素代謝お よびグルコース供給をラットにおいて変化させ，高磁 場MRI画像コントラストがへモグロビンへの酸素結 合度で変化することを見いだし，blood oxygenation level dependent (BOLD)効果を提唱した.同年， Moseleyらは，ネコの中大脳動脈閉塞モデルを用いて 6時間連続MRIを実施し，中大脳動脈閉塞後45分の 超急性期において，拡散強調画像法が閉塞による細胞 毒性浮腫を検出することを報告した.更に，1992 年，Detreらは，arterial spin labeling(ASL）を用いた 灌流MRIの基本原理を提唱し，ラットを用いた実験 で観血的血圧測定により生理状態を随時モニタリング しながら吸入麻酔濃度や酸素代謝を変化させ，脳血流 の変動をASLによって評価できることを示した. これらの輝かしい神経画像法の開発につながった前臨 床研究は，最適な疾患モデルや動物処置を用いた見事 な研究デザインにより達成されたものである.