地域のインフラはみhなで守る　情報発信と市民との協働に向けた取り組み

摘要

社会インフラの老朽化問題で、特に深刻なのは、財政力や技術力が不足している地域のインフラである。2020インフラ健康診断書【道路部門】においても、市町村管理の橋梁の健康度や維持管理体制が低いことが指摘されている。インフラはその用途や重要度がさまざまで、1日10万台が通行する都市内高速道路橋もあれば、1日10数台しか通らない地域の橋もあるが、人々の暮らしを支えるという点ではどちらも欠かせない。大切なことはこうした橋のダイバーシティ(多様性)を尊重し、それぞれの身の丈に合ったメンテナンスを行うことである。その処方箋は現在のコロナ禍(2020年7月現在)と同様で、損傷が深刻な橋梁にメンテナンスの予算と技術を投じる一方で、健全あるいは軽微な損傷の橋梁に対しては日常の予防保全に努めることである。問題は誰がこの日常的な予防保全を行うかであるが、今後過疎化が進み、財政力、技術力の乏しい地方自治体では、住民の力も借りたメンテナンスを行う必要もあると思われる。すなわち、全てを医療従事者に任せるのではなく、歯磨きやうがい•手洗いなどの日常行為は住民にお願いするというものである。農村社会では、「普請」と呼ばれる地域のインフラを住民自らが整備してきた経緯がある。こうした取り組みを現代風にアレンジし、全国各地に展開するためには、市民にインフラの意義や将来像、そして簡易な予防保全の必要性を知ってもらう情報発信が不可欠で、加えて、身近なインフラに対する意識を無関心から関心、そして愛着へと変えるための取り組みが必要と考えている。