電磁界の安全性評価にかかわる経緯と動向: 電気工学分野の技術•研究のかかわリ

摘要

私たちの身の回りにある電磁界には,地磁気や雷など自然現象に由来するものと,送電線,家電製品や携帯電話など,人工物に由来するものがある。特に,人工的な電磁界については,これが人の健康に影響を及ぼすのではないかという懸念が,1960年代後半に商用周波数の電界に対して提起され,以来,電磁界の健康影響を解明するための数多くの実験•検討がなされ科学的な知見が蓄積されてきた。その後,これらの知見に基づき電磁界の健康リスクの評価がなされるとともに,人体を保護するために守るべき指針とその標準評価手法が整備され,電磁界の安全性を評価するための手法•手順が確立されてきた。電磁界の健康影響の解明は,医学•生物学が主体の課題ではあるものの,これら一連の検討において電気工学分野の技術•研究の果たした役割は大きい。本稿では,電磁界の安全性評価にかかわる経緯と最近の動向について概説するとともに,この過程において,電気工学分野の技術-研究がどのようにかかわってきたかについて述べる。