海底環境計測における海洋音響技術

摘要

各種超音波利用技術の原点ともいわれる「水中音響技術」は，光が届きにくい水中において必要不可欠な技術であり，海底地形計測，水中測位，水中通信，水産資源調査，海底資源探査など幅広い分野で利用されている。また，近年，水環境への関心は世界的に高まっており，水圏環境計測に音響技術が応用される例も増えてきている。ここで水圏環境計測とは，海，川，湖沼などの水域における環境変化•状態を計測することであり，生物多様性の維持，海洋资源利用に向けたアセスメント，地球温暖化の抑制など，環境保全，修復，改変を目的として様々なデータを計測することである。特に最近では，海洋再生可能エネルギーの発電施設建設やリゾート開発，その他海洋インフラ設備の整備などの海洋開発が，海洋環境に及ぼす影響について関心が高まっている。データ計測の手段としては，主に，音響，光などによる物理的な計測方法や，元素などを利用する化学的な計測方法が用いられている。水中環境は様々な要因の影響を受けるため，これらの計測方法は組み合わせて用いられることが多いが，筆者らは特に，音響技術を応用して水圈環境計測を高度化するための新しい計測手法や計測システムの開発を進めている。表-1に，各物理的計測手法の特徴を記載する。ここで，本表はMartignac et al.などのべンチマーク情報や筆者のこれまでの聞き取り調査，フィールドワークの経験に基づいて作成されていることにご留意いただきたい。