『驕る権力，煽るメディア』

摘要

『驕る権力，煽るメディア』というタイトルが気になって手にとった.著者が骨のあるジャーナリスト斎藤貴男ということもあった.本書は，小規模事業者の団体「全国商工団体連合会」が発行する「全国商工新聞」（22万部）に，2015年4月6日号(第1回）から隔週で約5年にわたり連載されたコラム『メディアの深層』（750字）が100回を超え，「現時点でも多くの読者に読んでほしい原稿を集め，編集時にもう一言（初出以後の動静や著者の感慨，脚注，125字）を加筆し，再構成した」ものであり，5年間のメディア時評といえる.著者の視野は，新聞報道からテレビのドラマ，バラエティ番組に至るまで広い.新聞社の置かれている状況には，朝日，読売，毎日，日経の全国紙4社が2020東京五輪の「オフイシャルパートナー」（スポンサー料60億円を分け合った）となったこと，マスメディァ企業のトップや編集幹部が安倍首相との会食を繰り返していることにより，五輪がらみの事件(JOC竹田恒和会長の贈収賄容疑，エンブレム問題，新国立競技場建設問題）の深層が追及されず幕を下ろし，失敗の原因，責任の所在が曖昧にされ(34頁)，また，日本新聞協会が自民党に「オネダリ」した結果，消費税8%の適用を受けることとなり，「政権に楣突かないのが習い性になった」(115頁)と，著者は手厳しい.