建築書系道具雛形における茶の道具の重要性と記述の特質

摘要

日本近世以前の伝統家具調度類に関する和書の史料を「道具雛形」として調査収集し研究してきた注1）。道具雛形には近世以前の種々多様な道具について、その名称・意匠・用法等さまざまな内容が記載されている。道具の種類についていうと、衣桁、机、硯箱など日常生活用具を含むのはもちろんのこと、現在の感覚では「家具調度」として意識しない道具も含まれている。例えば戦時の楯や具足類、儀式時の包丁道の狙板、移動時の挟箱などである。主たる著述概念が建築技術にあるとはいえ、このように多様な記載があるなか、分析の方法として建築書系道具雛形に書かれた伝統家具調度類を機能別に捉えて分類している注2）。全40史料を総覧して分類したところ、道具の記載項目数をみると武具・茶湯具・文房具が特に多く、それらで全体のおよそ60％を占める。とくに茶湯具に関する記述を見ると、その項目数の変遷には特徴があり、また茶湯具と建築のしつらいとの関わりも深く、道具設計の面でも特筆すべき点が認められると予想される。そこで本稿では、建築書系道具雛形における茶の道具（点前の道具だけでなく、数寄屋のしつらい用具を含む）について建築書系道具雛形を対象として分析し、その特質を明らかにする。個々の茶湯具の寸法や意匠に関する特質については別に論じたい。%This study aims to clarify the characteristics of the utensils for tea-ceremony in Japanese Traditional Furniture Beference Books -concept of architecture-. The trait of a historical transition and the description of the utensils for tea-ceremony in 40Booksv/ere analyzed. The conclusions are as follows.The number of items of tea-utensils in a functional classification is most, and the main content. It expresses the importance of tea-utensils among various furniture in books. As the characteristics of the description, several kinds are collected about one tool or furniture, the design size is detailed sometimes shown in oldrimunit, and details like the material and finish, etc. are described as for the design.