消費者の選択行動モデルに基づく購買地の勢力圏: 東京都区部に対する実証的分析

摘要

This paper intends to analyze the retail trade areas in Special wards of Tokyo based on the consumer behavior model. Some metropolitan cities have well-developed traffic system, and since actual-distance and time-distance are not in direct proportional relationship, we can arrive at the destination fester than expected time. Therefore, retail trade areas in some metropolitan areas have more complicated form than Voronoi diagram. At first, we analyze the general attributes of the retail trade areas based on the customer behavior model. In particular, we discuss the geometric attributes of it and reveal the conditions for the unique form of it. Next, we construct some consumer behavior models, and estimate statistically with actual data. Furthermore, we visualize the retail trading areas in Special wards of Tokyo as a case study. The consumer behavior models are based on the Huff model and the MNL model, and taken attributes of The retail areas into account to reflect some types of consumer behavior. We reveal that the differences between the form of trading areas depend on some types of consumer behavior.%本論文は，消費者の選択行動モデルを用いて東京都区部の購買地の勢力圏を分析するものである.勢力圏は様々な測定方法が提案されている.古くに提案された重力モデルに基づくコンバースの分岐点公式は二つの購買地を想定し，これらへの消費流動量が同じである地点を分岐点として定義するものである.しかしながら，三つ以上の購買地を想定する場合，購買地の圏域が重なり合う，またはどの購買地にも属さない領域を伴う不可解な勢力圏ができてしまう.この欠陥を修正するため，ハフは選択行動モデルに基づいて消費者の選択確率を等高線で表現する勢力圏の測定方法を提案している.この測定方法は，消費者の選択行動に基づいたものであるため，購買地の後背地を視覚的に表現することが可能で，現在においてもマーケットリサーチなどの分野で多用されているものである.勢力圏に関する研究はあまり蓄積がなく，本国では，笠原らや玉川による研究がある.笠原らは京都市に対して実証的に研究しているが、ハフモデルなどのいくつかの選択行動モデルを用いて計16の購買地の勢力圏を測定し，時間距離のモデルやボロノイ図に基づく測定方法の有効性を示している.しかしながら，東京のような購買地が密集している地域に対する勢力圏の測定や，それに伴う圏域形態に関する考察，消費者の買回品•最寄品購買行動における勢力圏の差異いついては未だに研究の余地を残している.そこで，本論文では，様々な購買パターンにおける勢力圏を視覚的に表現し，現況の勢力圏についてその圏域形態を分析する.第2章では，既往モデルに対し購買地の属性を考慮した消費者の選択行動モデルを構築する.第3章では,選択行動モデルに基づく勢力圏の幾何学的性質と，大都市において顕著にみられる特異な圏域形態を分析する.第4章では,構築した選択行動モデルを統計的に推定し,続く第5章では，第4章で推定している選択行動モデルに基づいて東京都区部の購買地の勢力圏を視觉的に表現して分析する.終章では,本研究で得られた知見をまとめ，今後の課題を述べる.