設計プロセスにおける論理学的，倫理学的，美学的次元の関係: C.S.パースの規範学に基づく探究としての設計プロセスのモデル

摘要

For designing, problem-setting is no less important than problem-solving, when design problem is a "wicked problem", which cannot be definitely formulated, but should be clarified or refrained through the design process. This paper develops a model of design process as an inquiry, where its logical, ethical, and esthetical dimensions are distinguished and related, based on a reinterpretation of C.S. Peirce's theory of inquiry and normative science. This model explains why and how problem-setting must depends on ethics and esthetics, rather than on logic. We use this model to explore how design problems are clarified and reframed.%建築は古来より芸術としてみなされ、その設計は美学的観点から考察されてきた。20世紀からは、一種の機械の設計として、あるいは機械による設計を目指して、論理学的あるいは数理的観点からの研究が台頭した。その中で始まった初期の設計方法論は、設計を「問題解決」として理解し、この解決の過程を数理的手法の導入によって合理化•効率化することに集中した。20世紀後期には、このようなアプローチは、問題をあたかも所与のものとして客観的に存在するかのように見なし、「問題設定」をないがしろにするとして、H.リッテル(H. Rittel)やD.A.ショーン(D.A. Schoen)らによって批判された。リッテルは、設計の問題は決定的な定式化を与えることはできない「意地悪な問題(wicked problem)」であり、その設定は所与ではありえず、常に恣意性を免れない価値判断を含んでいるため、設計は政治的な行いであるということを指摘した。ショーンは、設計とは常に不確定を孕んだ具体的状況の中で行われるものだということに注目し、設計を「状況との対話(conversation with situation)」として描写した。こうして設計は、政治的論争として、あるいは他者との対話として、倫理学的観点から語られるようになった。本論では、この3つの観点の関係について考察する。