The aim of this study is to clarify the framework of architectural thoughts with the word "box" through analyzing design theories of contemporary Japanese houses. Firstly the conceptural recognitions for "box" are classified into four categories (Simplicity, Unitarity, Primordiality, and Histricity) through analyzing articles written as design theory for houses by-architect. Secondly the organization forms of "box" are analyzed from two aspects. The one is the characteristics of "box" which is classified into Mass type and Volume type, and the other is the operations on "box" which shows the number of "box" to operate or not to operate. Finally relations between the conceptural recognitions and the organization forms of "box" are analyzed totally including a chronological consideration.%ル·コルビュジエが、新たな時代の建築像としてサヴォア邸を「空中に浮かぶ箱」と表現した例や、日本において試みられている「箱」をテーマとした住宅作品などの例のように、「箱」という言葉は建築家が設計論を展開する際に自身のコンセプトを投影し得る重要な概念となっていると考えられる。このことは「箱」という言葉が、単純な面により構成された形態としての量塊的·幾何的特徴を示すと同時に、内部に気積をもった入れ物としての容器的·空間的特徴をあわせ示すことから、建築の抽象モデルのひとつとして、さまざまなイメージを内包しうる概念であるためと考えられる。こうした「箱」の2つの側面を独立して認識することは、直方体のようないわゆるボックス形状の形態的特徴をもたずとも、「箱庭」のように浅い盆の上につくられた種々の要素を含む世界を成立させる枠組みに対し「箱」という言葉が用いられる例を見出せるように、我々の慣習としても一般的と言える。また、表意文字である漢字を用いる日本においては言葉のもつ意味の多様性が漢字の種類数にあらわれることがある。例えば「はこ」と読む漢字は「箱」、「函」、「筥」、「匣」、「筐」と数種類有り、日本文化における「はこ」的なモノあるいは概念への洞察の歴史が伺える。そこで本研究では、「箱」もしくはそれに類する言葉を用いて設計の主題を提出している論説を資料とし、その内容を検討することで、建築の抽象モデルのひとつとしての「箱」という言葉に投影された建築家の思考の広がりとその射程を捉えることを目的とする。筆者らは既報論文において建築家が「空間」という言葉を用いた創作概念によって自身の設計論を組み立てる事例について考察した。本研究における「箱」という言葉を用いた設計論の組み立ては、そうした検討の延長上にある。「空間」が曖昧で多義的な言葉であるが故に建築家がさまざまな主題を投影して設計論を組み立てていたように、本研究で検討する「箱」という言葉も建築家のさまざまな主題が投影されていることが予想される。
展开▼
