現代日本の建築家の設計論にみられる引用の対象と形式建築の設計論にみられる建築・芸術作品の引用に関する研究（1）

摘要

詩人のT.S. エリオットは、引用によって過去を現在に生かすことの重要性を指摘した1)。また近年では文化盗用2) の問題が議論されるなど、創作における引用の問題系は多岐にわたっている。建築の設計論においては、歴史上の建築作品や建築様式、同時代の他作家の作品、また周辺環境としての建築等が引用され、その対象は形状、素材、構成等と様々である。また、建築以外の文学・芸術作品が引用される場合もある。さらに、設計論からは引用元と同様/ 対立の意味をもたせるもの、意味を独自に発展させるもの等、引用の形式が抽出できる。そこで本研究では、他の作品または過去の様式の引用がみられる現代日本の建築家の設計論を資料とし、引用対象と形式を検討することで、現代日本の建築家の引用を通じた建築表現の拡がりの一端について明らかにすることを目的とする。