中国地方における公立中学校の生徒•学校数推移の地域特性(1963-2010)

摘要

1947年の学校教育法制定により中学校教育が義務化され、各自治体で学校施設整備が取組まれたが、1953年の「町村合併促進法」施行により小規模町村の合併が進められ、これに伴い学校施設の再編が課題となった。1956年の「新市町村建設促進法」により、学校統合時の校舎建築費に対する国庫補助率が引上げられ、「公立小•中学校の統合方策についての方針（中央教育審議会）」と学校統合基準が示され、これを契機に学校の統合が強力に進められた。地方の農山漁村地域の過疎化が1960年代の高度経済成長期以降本格化し、1970年の「過疎地域対策緊急措置法」により統合校舎建築の国庫補助率が2/3に引上げられ、学校統合の動きが加速した。第2次ベビーブームにより1980年代前半には、地方圏においても生徒数の減少傾向は一時期収まるが、その後は再び大幅な減少に転じ今日まで継続しているため、統合と存続校の小規模化が進行した。その結果、全国的にも人口減少が著しい中国地方の中山間地域や島嶼地域では、過疎化•高齢化に加え生徒数減少による中学校統廃合が同時に進行し、将来的なコミュニティ持続が危惧される地域を多数抱えている。こうした過竦地域の自治体では行財政基盤の弱体化が進行し、平成の町村合併推進により2000年以降都市自治体と合併し、都市•農村を包含した広域自治体を形成した地域も多く、生徒数減少や老朽化に伴う学校再編が進められている。過疎地域におけるコミュニティの維持と活性化を図る上では、子育て世帯の定住促進のための学校存続を含めた再編計画の策定と建替え•耐震化の促進、廃校施設の維持管理と有効活用等が重要である。特に小規模中学校は、学級数が少なくかつ学級編成時の免許外教科担任等の問題を有すため、自治体再編を契機に経営合理化の観点から統廃合が進められる場合が多いが、自治体の公益施設再編計画の一環として学校再編の方向性を慎重に検討することが重要と考える。