人民公社の設計における居住区域の配置計画の方法論に関する研究河南省駐馬店市遂平県「衛星人民公社」案を事例として

摘要

1949年建国後、中国では、工業化、現代化の為に、農業や工業、商業など各領域で大幅な公有化改革が行われた。その中で、農業協同化の発展に伴い、20世紀50年代末中国の広大な土地では新しい社会組織が成立した。それが「人民公社」である。「公社」は中国の独創ではなく、従来の社会主義者が、彼らの最終目標である共産主義社会実現の途中段階の組織として、構想したものである。1958年の中国では、いかに社会主義国家を徐々に共産主義社会へ移行するかという問題に注目し、『マルクス、エンゲルス、レーニン、スターリンが共産主義社会を論じる』という書籍が編集され、その時代の課題は共産主義社会の実現であることが主張された。また、このような当時の社会主義の影響は建築界に及んで、設計、調査や建築史学研究の重点領域が古代建築等の研究から人民公社の計画に転換した。人民公社は、初期段階では主に農村部に発足したが、こうした公社の建設は時代の急務として認知されていたために、全国の大学、地方設計院等により農村での調査や設計活動が数多く行われることとなった。換言すれば、人民公社の計画をきつかけに、近代建築教育を受けた専門家たちは、建国後の中国の農村で自ら新時代の新生の農村計画と建築提案を推進していくことになつた。こうした国家の大躍進政策に生じた人民公社運動に打ち込んだ当時の中国国内の建築専門家達は、いかにして共産主義的公社ユートピアを計面したのか。またその方法は何に由来しているのだろうか。