清代五台山鎮海寺の建築の構成とその変容中国仏教、チベット仏教と皇帝権力の関係に着目して

摘要

五台山は清涼山とも呼称され、山西省忻州市の東北に位置する。南北朝時代以降、五台山は長安•洛陽と並び、仏教中心地の一つとしてアジアで広く知られていた。その後モンゴル族が中国を支配した元代に、チべット（西藏）から伝来し五台山に定着した仏教をチべット仏教という。このチベット仏教に対して、インドからシルクロードを経て伝来し、漢民族に信仰され漢訳経典を根拠とする仏教を中国仏教という。満州族が中国を支配した清代には、皇室はチべット仏教を強く信仰し、聖祖（康熙帝）、髙宗（乾隆帝）、仁宗（嘉慶帝）の三人の皇帝は度々五台山へ巡幸を行った。皇室の尊崇によって五台山のチべット仏教は発展し、山内の建築の多くが整備された。