集合住宅の住戸の間取りと居住者の生活評価の関連性

摘要

住宅の間取りと住む人の幸福の関係は、多くの人が高い関心を持つており、家相の本をはじめ、様々な間取りの本が出版されている。しかし、学術的な研究はそれほど多くない。清家~(1))は、家相を科学的にとらえなおそうとし、科学的な根拠を見出そうとしてさまざまな推論をして家相の根拠を説明しているが、実際の調査を通して因果関係や関連性を統計的に検証したわけではない。間取りについての学術的な研究は、間取りの事例を調査して類型化やその変遷を明らかにしようとする研究と、住まい方の実例を調査して間取りと住まい方の実態との関係性を明らかにする研究が多い。花里ら~(2))は、空間構成をスペースシンタックスによりモデル化して分析をし、集合住宅の住戸においては、高度経済成長期の頃から独立性の高い個室が設けられたとしている。横山~(3))は、子供部屋は親の目が常に届き、玄関との動線上にリビングやダイニングがあることが好ましいと考え、リビングや親の寝室から完全に分離された子供の個室を問題視している。小伊藤~(4))は、マンションリフォームを対象に間取りの分析をし、近年のリフォーム後の住宅の間取りは、公室が拡大して私室が縮小している傾向にあり、子供室などの個室から玄関までの動線に公室を経由したり、個室を公室との連続室にして開け離した状態を主としたりして、公室との空間的つながりが強化されていることを指摘している。鈴木•岡•切原は~(5))、居間中心型住宅、特にリビング階段のある郊外型住宅団地の300世帯を対象へのアンケ一ト調査を行い、リビング階段のある住宅における居住者の評価の傾向を明らかにしている。正岡'飯塚~(6))は、松江市内の戸建住宅に住む居住者323世帯に対しアンケート調査を行い、団らん空間は食事空間、キッチン、個室につながりがある方がよいと考える割合が多く、その傾向は低年齢の子供がいるほど顕著であることを報告している。山田•倉斗~(7))は、大学生236名を対象に自宅の空間構成とコミュニケーションゃ家族の関わりに関するアンケート調查を行い、団らん空間を経由する空間構成では、団らんの頻度が多い傾向にあることを報告している。Flade~(8))は、ドイツの補助金支給住宅の世帯に対しヒアリング調査を行い、大きなキッチンスペースを中心に様々な部屋が接続している間取りは居住者の評価が高く、多様な生活行為や家族間のコミュニケーシヨンが育まれるとしている。Rachelら~(9))は、ィスラエルの了パー卜に住む45組世帯総勢185名への自分の居場所と過ごし方に関する調査を行い、個室を共有する人数が少ない子供ほど、個室の中での遊び、宿題、読書を行うことを明らかにしている。宫田ら~(10))は、のべ771名の学生へのアンケート調査を行い、子どもの成長の過程と居間を通ってアクセスする個室とそうでない場合の空間構成の評価を行っている。これらの研究では個室と家族空間など特定の空間の関係性に着目して間取りを分類し、活動や満足度との関係性を分析し考察している。%Although there are many researches of room layout, few researches examine the relationships of spatial properties and evaluation by habitating people in apartment houses. This study aims to reveal the relationships of the characteristics of room layout and living room to the frequency of activity at home, to the satisfaction level of indoor environment, to the evaluation of floor plan, or to the lifestyle and quality of life of residents through a large questionnaire survey distributed to the habitating people in apartment houses in Tokyo metropolitan area. Through statistical analyses, several statistical evidences of the relationships were found and discussed.