ステンレス鋼における稀少資源使用量削減と高機能化の同時実現と今後の展望

摘要

ステンレス鋼は耐熱性や耐食性に優れた鉄鋼材料であり，自動車や家電，厨房，建材から石油，化学プラントをはじめとするエネルギー分野にも幅広く使用されている.図1には，ISSF統計に基づいた2013暦年のステンレス粗鋼生産実績を示している.近年，世界のステンレス粗鋼生産量は3,500万Mgを超える.これらステンレス鋼は，CrとNiを添加したオーステナイト(γ)系，Niをほとんど含有しないフェライト(α)系に大別される.ここで，γ系はSUS304(18%Cr-8%Ni)とSUS316L(18%Cr-12%Ni-2%Mo)に代表される.特にSUS304は，その発明以来1世紀を経た現在も，世界のステンレス生産量で約40%を占める汎用鋼である.