肝硬変

摘要

肝硬変とは,長期にわたる肝組織の壊死·炎症～再生により組織学的に偽小葉を形成したものであり,慢性肝炎あるいは慢性肝障害の終末像である.肝硬変を強く疑わせる身体所見として,くも状血管腫,女性化乳房,黄疸,下腿浮腫,腹水,腹壁静脈の怒張,肝右葉の萎縮,肝左葉の腫大,脾腫などがあげられるが,これらは初期の代償性肝硬変で認められないことが多い.血液生化学検査では,ヒアルロン酸,7Sコラーゲン,Mac-2結合蛋白糖鎖修飾異性体(Mac-2 binding protein glycosylation isomer:M2BPGi)は,肝硬変の診断能に優れており,また血小板数やAST,ALT,年齢などを組み合わせたFIB-4 index,AST to platelet ratio index(APRI)などのスコァリングの有用性が多数報告されているが,肝硬変の成因によってカツトオフ値が異なり,まだ確立されたものはない.これまで肝硬変診断のゴールドスタングードとされてきた診断法は肝生検であるが,観血的な検査であり,またサンプリングエラーや評価者間の組織診断の不一致といった問題もある.そこで肝生検に替わり得る肝線維化評価として,超音波組織弾性イメージング法である超音波エラストグラフィと磁気共鳴(magnetic resonance:MR)を用いたMRエラストグラフィ(MRE)があり,肝臓に対し外部からカを加え組織に変化を生じさせ,その変化を定量化して硬さを測定する.線維化診断能は同等であったとの報告がある一方で,患者の体格や腹水の有無,観察者による再现性などの因子により,客観性·信頼性はMREに軍配があがるとされている.一方でMREは施行可能な施設が限られ,コストについても超音波エラストグラフィが安価であるため,一般的なスクリーニング検査は現時点では超波エラストグラフィにより肝硬度を測定し,その他の検查結果を踏まえて総合的に肝硬変の診断を行っていく.