喫煙に関連した肺癌の発生率には人種差がある

摘要

肺癌は日本をはじめ，多くの国で人口当たりの死亡数がもっとも高い悪性腫瘍である．日本では肺癌で毎年5万人以上の人が亡くなっており，2003年の統計で男性の癌死亡の22％，女性の12％を占め，それぞれ第1位，第3位となっている．肺癌の80～90％はタバコが原因である．厚生労働省多目的コホート研究によると，非喫煙者と比較して既喫煙者で2.2倍，現喫煙者で4.5倍，肺癌に罹患するリスクが上がる．その他の報告でも日本の喫煙者のリスクは2～5倍とする報告が多いが，欧米の疫学研究では喫煙者のリスクは10倍前後とするものが多い．そのため，以前より日本人は白人と比較して肺癌発生への喫煙の関与が小さい可能性が指摘されるなど，喫煙に伴う肺癌発生に人種差が存在する可能性が報告されてきた．