複合物理で考える熱中症リスク

摘要

高温·多湿環境下で人は発汗し，その気化熱により体を冷却することで体表面及び体内深部温度を制御している.発汗により水分及び塩分が過度に失われ，この熱の吸収·産生と放散のバランスが崩れると，体内深部温度は著しく上昇する.このような状態がいわゆる熱中症である.地球温暖化に伴い，我が国では毎年6月から9月にかけ，熱中症に関わる話題がマスメディアをにぎわすが，米国あるいは欧州でも熱波に伴う熱中症による患者数が増加の傾向にある.日本国内の熱中症による死亡者数は，1968年から2007年の40年間で6,770件に及び，年齢別人口当りの熟中症死者数は，成人と比べて子供及び高齢者の割合が木きい.暑熱環境下におせる子供の車内放置等による死亡事故の話題が多い一方で，高齢者の大半は生活環境下で熱中症を患う.