ビッグデータが変える日常と非日常の境目

摘要

近年の情報通信技術(以後ICTと表記)の驚異的発展は,軍事,先端科学といった,非日常的場面から,日常生活の隅々にまで影響を及ぼし,今や,我々の生活の在り方そのものまでをも変革しつつある。筆者が大学生であった1980年代,音楽,ビデオ,書籍といった,趣味・娯楽のコンテンツは,レコード(若い読者はもはや,そのものの形や色の想像がつかないかもしれない),ビデオテープ,紙といったものでもって,生産者から消費者へ,複雑で何段ものプロセスを経て"手"渡されていた。今やそれらは,インターネットを通して,クラウドセンターから消費者へ,一度もものの形態をとらずに直接的に届く。中抜きされた結果,ものの製造に関わる産業はおろか,ミュージックショップ,ビデオレンタル屋,本屋などが街中から消滅・急減した。それは,これらの産業の形態がICTの発達により,情報サービス業に変化したためである。