市販流通食品中の放射性セシウム調査(平成24年度および平成25年度)

摘要

平成23年3月の東京電力福島第一原子力発電所事故により，放射性物質が環境中に放出され，周辺地域で生産された農作物や畜肉類，魚介類等の食品が汚染される事態となった.厚生労働省は，放射性物質により汚染された食品の摂取を防止し，食品に対する安全•安心を確保する食品衛生法の観点から，当時の原子力安全委員会により示された指標値を暫定規制値として設定した.これに伴い，各地方自治体は検査計画を策定し，暫定規制値を超過する食品が流通することがないよう放射性物質(主として放射性セシウム(以下，放射性Cs)および放射性ヨウ素)検査を実施することとなった.また，暫定規制値を超過する放射性物質を含む食品の地域的な広がりが確認された場合は，原子力災害対策特別措置法第20条第2項の規定に基づき，食品の出荷制限等の措置が講じられた.われわれは，暫定规制値が設定された平成23年度に市販流通品の買い上げ調査を実施し，各地方自治体における出荷前の放射性物質検査体制がおおむね有効に機能していたことを確認してきた.平成24年4月より，暫定規制値に代わる現行の基準値(放射性Cs濃度として，一般食品：100Bq/kg，乳児用食品•牛乳：50Bq/kg，飲料水：10Bq/kg)が成分規格として定められ，暫定規制値よりも厳しい基準で引き続き検査が実施されている.そこで本調査では，現行の基準値施行後において各地方自治体を中心に実施されている食品の出荷前における放射性Cs検査体制の実効性について検証することを目的とし，放射性物質汚染が予想される地域産の流通食品について，平成24年度および平成25年度に買い上げ調査を実施したので，その結果について報告する.%We surveyed the concentration of radioactive cesium in foods purchased at markets in areas where possible contamination has been a concern after the Fukushima accident. In fiscal years 2012 and 2013， we surveyed 1,735 and 1,674 foods, respectively, using a Nal (Tl) scintillation spectrometer for the screening test and a γ-ray spectrometer with a germanium semiconductor detector for the final test. Only 3 and 4 samples (0.2% of our total samples) exceeded the regulatory limit (100 Bq/kg) for radioactive cesium in fiscal years 2012 and 2013, respectively. Our surveillance indicates that the pre-shipment monitoring of foods by local governments has been working effectively.