東アジアにおけるグリーン成長戦略の動向と課題

摘要

東アジアは，工業化の成熟段階に入っている日本，その成熟段階に入りつつある韓国と台湾，まだ急速な工業化の過程にある中国，そして視野を東南アジア諸国まで広げれば工業化の初期段階にあるインドネシアやベトナムなど多様な経済の発展段階にある国と地域で構成されている。したがって，この地域のグリーン·エコノミーの進行状況と達成度合いも一様ではない。このような状況で，近年日本ではグリーン，エコノミーの進展に資する制度的な基盤づくりが進められている。とくに，近年の成果として挙げられるのが，2012年7月から実施された再生可能エネルギーに対する固定価格買取制度，そして同年10月から施行されている地球温暖化対策税(炭素税)である。ただし炭素税については，税率がCO_2トン当たり300円未満の低率で段階的に導入することもあり，欧州の各国で行われている環境税制改革を実現できるレベルには程遠い。また，環境省を中心に進められてきた温室効果ガス排出権取引制度の導入は，日本経団連など産業界の強い反発で依然として実現していない。しかし，自治体レベルではァジァ初の温室効果ガス排出権取51制度を東京都が2010年から実施しており，周辺自治体にも影響を与えている。