欧州諸国におけるグリーン成長戦略の動向と課題: 再生可能エネルギーを中心に

摘要

グリーン成長について世界的に共通した定義はないように思われが，大枠では，環境保全型産業の拡大を通じて経済成長を達成し，雇用を確保することと考えられているようである。環境を破壊するのではなく，それ自体環境影響が少ないか，もしくは環境破壊的産業を置き換える産業を環境保全型産業であるとすると，このような分野で急成長しているのは再生可能エネルギー(以下　再エネ)である。とりわけ欧州では，再エネ普及が気候変動対策の一環として1990年代から位置づけられ，具体的政策が，欧州各国およびEUレベルの双方で実行されてきた。これらの再エネ普及政策は，この20年の間に成功をおさめ，欧州では再エネ利用が着実に進み，今では，世界的にみて再エネ利用の先進地域となっている。欧州の興味深いところは，EU規模の戦略においても再エネが位置づけられるようになっていることである。本稿では，こうした欧州の再エネ普及政策とそれがもたらした成果，欧州が直面している課題について述べることにする。