映画監督の風景の見方に伴う制作プロセスヴィム・ヴェンダース写真集「Written in the West」インタビュー分析を通して

摘要

近年、美術家や批評家の活動の中で、リレーショナルアート( 注) と呼ばれる分野が主題として数多く取り扱われており、他者を作品内に積極的に介在させることを志向する点が特徴である。しかし、クレア・ビショップはこの関係さえも作品の完結性として取り込まれた結果、批評性を失う構造を指摘している。この構造は近年の観光の中でも、旅行者の期待に沿って地域の改変が起きる危険性に通じている。美術の場合は作家が存在すれば、あくまでも作品として自立しえるかもしれないが、一般的な地域においては旅行者も地元もそのニーズを捉えようとするあまり、本来の姿を見失い、期待される像へと風景が歪曲される可能性が考えられる。建築もその在り方によっては風景の改変を行い得る立場にあり、それに加担する恐れもある。こうした中でいかに風景の本来の在り方を認識しその改変を避けることが可能かを考えるとき、現実の場をフィールドとしつつも、作品は現実とは別のレベルにある映画の制作プロセスや撮影行為から学ぶことがあるのではないかと考えた。