琵琶湖疏水「鴨川運河」の魅力

摘要

鴨川運河とは，琵琶湖疏水のうち冷泉放水口(左京区冷泉通川端·鴨川合流点)から伏見区堀詰町までの全長約9kmの区間の呼称である。写真-1に見られる伏見区·深草地域を流れる鴨川運河は，琵琶湖疏水水系の他地区と比べ認知度が低く，話題になることは少ない。しかし，近代化に伴う土木遺産として貴重であるとともに，地域の暮らしや生業と密接に結び付いた存在であり続けてきた。それらの積み重ねが今日の鴨川運河景観を形成しており，現在も市民に親しまれていることから，注目に値する存在である。さらに，舟を曳くために橋を道路面より高くし，道路から見た側面が三角形になっている，写真-2のような三角橋と呼ばれる人道橋の橋梁群に代表される鴨川運河の各要素は，保全のための対処が必要な時期に来ており，今後の鴨川運河景観を左右する分岐点にあると言える状況である。市民が鴨川運河の地域資源としての価値を評価し，地域まちづくりの文脈におけるその在り方を考えていく必要がある。このため「鴨川運河会議」を結成し，これまでにシンポジウムを2度開催した。