糸状菌による植物ホルモンァブシジン酸の生合成•新奇な環化酵素の発見

摘要

植物は発芽、分化や成長、開花そして落葉や枯死に至る一生の中で，様々な植物ホルモンを生産してその過程を制御している。古くから存在が知られていた植物ホルモンは5種類あるが、その中の1つにアブシジン酸（ABA, (1))(図1)がある。ABAは、1961年にヮタの葉と果実の離脱を促進する物質として同定されたセスキテルペンであり、その後の解析により、乾燥や低温、高塩濃度などの環境ストレスに応答して気孔の閉鎖や種子の成熟や発芽の抑制などを引き起こすストレスホルモンであることが立証された。その特徴から、アメリカを中心に、トマトゃブドウといった野菜•果実類の肥大や着色促進剤、発芽時期の調整剤として圃場で利用されている。また、1は、植物に加えて原核生物であるシァノバクテリア、単細胞性の苔類、菌類、動物などからも発見されており、その生合成の起源とシグナル伝達機能についても興味を持たれている~(1))。