1968〜1996年: ドメスティシティの拡散

摘要

第二次世界大戦後、ドメスティシティは環境が完全に調整されたヒエラルキーのない無限の内部空間として拡張し続け、自然豊かな地球を凌ぐまでに至りました。しかし、住環境のこうした変貌は1973年に突然終わりを告げます。この年、アメリカにたいする原油禁輸措置により、ガソリン価格が1,000%近くまで高騰します。それに追い打ちをかけるように、宇宙から見た地球の姿がはじめて公開され、環境保護活動がかってない規模で活性化しました。こうした中、消費行為の激化に辟易し天然資源の限界に留意する、反体制文化運動が新たに出現し、自然とランドスケープを組み込んだ新しいコミューンの形成を試みるようになります。いわゆる「脱落者」と呼ばれるようになったこれらの運動家たちは、弊害をもたらす依存関係を生みだし、また地球をゼロ•サム•ゲーム-消費が武器となる場-と見なして国境のイデオロギーを強化する、政治経済的状況を拒絶しました。皮肉なことに、これらの人々が自然と調和した住環境を築くため農村環境や自然のランドスケープへと移り住むにつれ、彼らが忌み嫌う"システム''を蔓延させた張本人の技術やメディアが、その動きを回避するために利用されました。これら双方の流れの立役者となったのは、技術者、理論家として知られるバックミンスター•フラーでした。彼は、政府や軍と密接な関わりをもつ一方で、社会が地域、国家の境界を超え、地球的視野をもつようになるためには、テクノロジーが本来有する能力が必要であるとの認識を示しました。この立場からフラーは、参加者全員が日用品を使い、協力して平和で持続可能な惑星をつくる、教育用シミュレーションゲーム「ワールド•ゲーム」を考案します。自作の「ダイマクション•マップ」をもとにフラーが開発したこのゲームは、今では「リスク」という名で知られる、世界征服のために参加者が争う、勝者独り勝ちの「戦争ゲーム」に対抗してつくられたものでした。