早稲田大学40号館

摘要

低炭素社会の実現に向け，超低消費電力，高性能な国際競争力の高い次世代型マルチコア·メニーコアのハードウェア，ソフトウェア，応用技術の研究開癸と人材の育成を目指した研究施設である。 将来にわたる研究内容の変化へのフレキシブルな対応を追及し，1スパンをインフラの供給単位とする「ユニットラボ方式」を採用している。また，崖に面する敷地形状に対応しながら，基礎免震構造を採用することで，重要研究施設としての安全性を高めている。安定採光の得られる北側に面した研究室のガラスファサードは，360枚の縦軸回転ルーバーで覆っている。これらが光やプライバシーを調整するとともに，エアフローによって窓廻りの環境を安定させる簡易ダブルスキンを形成し，良好な研究環境を創り出している。また，ルーバーには「メモを自在に貼る」「映像を投影する」など家具的な役割を持たせ，研究者の活動や好みに応じて手動で角度を変えることのできる仕組みとした。1枚1枚のルーバーが外観のピクセルを構成し，ユーザーが選択した室内環境が建物全体の像として表現されるファサードを目指した。コア部に設備バルコニーを設け，空調屋外機の近接配置や配管シャフトの外部化により，配管経路を短縮し，搬送ロスを抑えた効率的でメンテナンス性·更新性に優れたシステムとした。また，共用廊下の両端部には，研究者の交流や発想の活性化を意図した「ミーティングラウンジ」「シンキングカウンター」という2つのオープンスペースを設けた。通風·採光に配慮した開閉可能なビューウィンドウやホワイトボードの機能を持つ壁をしつらえることで自由でリラックスした打合せの場となることを意図した。単調になりがちな研究施設内のアクティビティのなかに変化のあるシーンを生み出している。