不動産市場における新しいデータ活用の潮流

摘要

日本の不動産市場は以前より情報の非対称性が高い市場であると言われてきた。これは購入および賃貸検討者（個人）と不動産関連企業（法人）との間で所有している（利用できる）情報量が異なることにより、検討者が自身にとって最も適切な物件を選択することが難しい（ケースがある）ことを意味する。米国総合不動産サービス大手のJLLとラサールインベストメントマネジメントは2016年7月に世界の不動産市場の透明度を数値化した2016年版グローバル不動産透明度インデックスを発表した。このレポートによると日本の不動産市場の透明度は19位であり経済規模を考えると先進諸国のなかではまだまだ低位である。これは他地域と比較するとノルウェーやチェコ共和国と同水準となる.。先進国のなかでは後れを取っている日本の不動産市場の情報開示だが、例えば、米国の不動産市場が販売価格履歴を誰でも確認できるルール•仕組みになっている等、他国とは基礎となる制度の差も大きい。日本でも直近では住まいの販売価格履歴を一部見ることができるインターネットサービスが出現するなど民間企業の新しい動きもあるが、その活動は緒に就いたばかりであり、また情報の信頼性もすべてが高いものではない。日本の不動産市場では検討者が手に入れることのできる情報が定量データも定性データも圧倒的に不足している状況であり、ビッグデータ活用以前の問題としての整備が必要であると考えている。