構造へルスモニタリングのためのビッグデータの活用と課題

摘要

建築分野では、1980年代中ごろから制震（振）装置•システムの研究開発が活発に行われたが、その後、2000年代には普及段階に入るとともに、建築物を対象とした構造ヘルスモニタリングの研究開発が盛んに行われるようになった。同じころ、情報通信分野では、ュビキタス.コンピューティング/ネットワーキングが注目を集め、社会的にも大きなインパクトを与えた。「ュビキタス」という聞きなれない響きの言葉は、研究者だけでなく、企業の経営戦略のキーワードとして、経営層からも浸透していった。あらゆるモノや環境に超小型のコンピュータが埋め込まれ、これらがネットワークに接続されて状況を自動認識し、便利で快適なサービスを提供する、という未来像が示された。超小型のコンピュータには、実空間の状況をとらえるためのセンサも含まれる。それならば、あらゆるモノや環境に埋め込まれるセンサとして、構造へルスモニタリング用、あるいは地震観測用のセンサ群も加えて、「ュビキタス社会」のなかで未来のスマート建築を実現していこうと考えたのが、筆者が本来の専門である構造工学•地震工学と、情報通信の境界領域に身を置くこととなったきっかけである。