文献抄録

摘要

本論文は、六角形平面を持つ水平膜の吊り下げ曲面の形状解析から創生された自由曲面シェルに対する風力係数を取り扱っている。先ず研究の対象とする六角形平面の頂点を6点支持された際の自由曲面シェルの形態創生手法が述べられ、次に大気境界層を模擬した風洞実験や縮小模型について、そして計算流体力学ソフト(ANSYS-CFX)を用いて行われた数値解析について論じられている。実験模型は、縮尺が100分の1であり、スパン501.4mm、ライズ135.0mmである。この縮小模型は、著者によって開発された形態創生手法により創生された形状を基に、ArtCAMとCNCルーターを用いた高密度スタイロフォームの鋳型の作製、20MPaの圧縮強度を有するコンクリートによる型枠の作製、2層の繊維ガラスからなる4mm厚のシェルの作製という3工程から制作されている。風洞実験は、上記の方法で制作された六角形平面を持つ自由曲面シェルを対象に、層流と乱流の2種類が行われている。これらの実験結果とANSYS-CFXを用いて行われた数値解析結果を比較すると、外部表面の風力係数については、風向によらず良い対応を示していることが確認されている。一方、内部表面の風力係数については、実験と解析結果に差が見られるものの、最大値と最小値には一致が見られる。このような本論文の結果は、評価が困難とされる複雑な形状を有する自由曲面シェルの風力係数を、計算流体力学ソフトにより求められる可能性を示唆している。