教養教育共同化施設「稲盛記念会館」

摘要

教養教育共同化施設は,京都三大学(京都工芸繊維大学,京都府立大学,京都府立医科大学)の教養教育を共同で行う施設である。授業の選択幅を広げ,大学を超えた幅広い人間関係の構築を目指し,府立植物園に隣接した自然豊かな北山に計画された。教養教育の共同化という全国初の取組みということもあり,大小様々な教室や将来の間仕切り変更に柔軟に対応できるよう,PCaPC細柱を1間ピッチに並べ,床板はPcaPCのT型床版(ST版)を採用し,梁のない14mを超える大スパンの空間を実現した。1間ピッチの細柱は東日•西日を,1丈の大ひさしは高度の日差しを遮り,両者の組合わせで繊細で深みのある京都の町並に馴染む佇まいとしている。施設中央で南北に貫通する大廊下には「たまり」や「吹抜け」を点在させ,講義室,実習・研究室の出入口は内部が垣間見られるガラス張りとすることで,上下•水平方向に視線を通し,自然とふれ合いを誘発する交流の場を目指した。大廊下の「吹抜け」は自然換気と自然採光を誘因する「エコボイド」としても機能する。その他太陽光発電,雨水井水利用,地中熱利用,床空調など様々な省エネ手法も多数取り入れ,京都議定書の町に相応しい建物を実現した。