フィレンツェで「ワープ」してしまった

摘要

50年前、フィレンツェのアルノ川に架かるサンタ·トリニタ橋の真h中でワープしてしまった。留学生だった僕が西洋に合体してしまった瞬間だった。夕陽を浴びた街が目の前に重く広がっていた。諸々の建築群そして1000年を超える年月を経た壁画、彫刻、音楽、文学そして日々の生活がそのなかにあることをすでに十分に体験していた。西洋はメソポタミア、ギリシャ以来の5000年の歴史の積み重ねのうえに存在している、その証しが目の前に横たわっている。その足掛かりのうえに今自分は立つている、これが西洋だ。そのことを知識としてではなくからだ全体で知った瞬間だった。我に返った時、日本人である自分は、何の足掛かりもない底なし沼に浮いていることがわ力'つた。これが日本だ。それ以来僕は自分のなかに西洋と日本、二つの世界を持っている。