文献抄録

摘要

掘削時の支保ェとして用いるセメント改良体において、設計時には本来ばらつくはずの改良体の強度を決定論的に定めて検討することが多いと思われる。本論文は、セメント改良体の強度のばらつきや施工誤差を考慮した設計を行うための確率論を用いた設計フローを示しており、同様の構造物を設計する際の参考になる。また、セメント改良体が変形する際に、改良体の排水条件によってセメント改良体全体の挙動が異なる点についても参考になるものと思われる。軟弱な粘性土が厚く堆積する地盤における掘削工事において、事前に地盤を改良したセメント改良体を山留め壁の変位を抑制する支保ェとして用いることがある。本研究では、有限要素法を使用して、掘削底面を全面的に改良したセメント改良体（セメント改良床）の力学的な挙動について解析的な検討を行っている。まず、セメント改良体の構成則に有効応力モデルを用いて、掘削工事中におけるセメント改良体の排水条件についての評価を行い、実際の建設規摸でのセメント改良体は、非排水状態から排水状態に及ぶ可能性があることが示された。次いで、有限要素解析でのセメント改良体の挙動は、非排水状態と排水状態で大きく異なり、非排水状態では、ひずみとともに応力が急激に上昇し、ピーク強度に達すると、その後ひずみ軟化する挙動であった。一方、排水状態でのセメント改良体の変形挙動は非排水状態よりも軟らかい挙動を示すことから、排水状態でのセメント改良体は、極限状態に至らなくても大きな変位が生じる可能性が高いことを示唆している。また、セメント改良体内での強度のばらつき、セメント改良体の施ェ誤差についてランダムに設定した条件で検討し、セメント改良地盤全体の強度分布などを考慮した設計手法を提案している。