学校法人信州学園 さゆり幼稚園

摘要

老朽化した旧園舎を取り壊し新園舎を建設するための設計コンペが行われ、わたしたちの案が選出され実施設計•建築に至った。コンペ以来の計画条件として、近い将来に認定こども園への移行を予定、最大320人の園児を受け入れる、調理室•会議室•小学生対象の室内ホッケー場を兼ねた体育館が必要、敷地内の旧体育館を工事中も使用する、敷地北西には計画道路が掠めてい、予定建設費が3億円程度(外構含む)などの厳しい条件が課された。計画条件と敷地条件とを照らした結果、最終的に解体される旧体育館部分を中庭として、2階建ての保育室棟(南棟)•体育館棟(北棟)•玄関棟が取り囲む全体構成とした。保育室棟(南棟)には3·4·5歳児室を配し、園庭に面した明るく風通しの良い室内環境をつくっている。2教室をブロック化して3つに分け、これを雁行配置させて南ファサードに•なリズムを与えるよう計画した。体育館棟(北棟)には中庭に面して乳幼児室、他に会議室•調理室等を配し、2階に体育館を乗せている。南北棟の間は園の玄関とし、其々への動線の核とした。構造的には、玄関棟は木造とし、杉丸太柱を象徴的に用いて木造の雰囲気を強くアピールしている。南北棟は2階の音や振動が1階に影響しないよう、また防火規定•構造規定に適うため、1階RC造•2階W造の混構造としている。特筆すべきは、2階体育館の小屋組に間伐杉材を用いたサスペンアーチを用いた点である。120讓角の杉材を大栓で重ね合わせた上弦梁•下弦梁によりアーチを組み、12.5mのスパンを架構している。小径間伐材を利用し、特別な金物を用いず伝統的な大工技術でつくったことに意義があり、建設コストを抑え、緩やかなアーチを用いることで建物全体の高さを抑えることも意図している。内装には自然素材を多用し、特にこどもたちが直に接する床や腰壁には温かみのある信州唐松材を用いた。外構計画も十分に考慮し、特に境界には植栽帯のある塀を設け、周辺地域の環境に調和する幼稚園となるよう心がけた。