いっか来るその日のために建築ができること

摘要

僕たちは団塊の世代で、大学1年の時に東大安田講堂事件。地方大学でも、学生たちは社会体制や大学の権力構造に異議申し立てを行ってきました。特に医学部では当時の医局講座制のもと、教授をトップにしたピラミツド型の構造が強くあって、それには、学位の授与が大きくかかわつている。では、学位をとらなければいいんだという風に決めていたのですが、大学病院の医局に入ると、研究をして学位をとらないわけにもいかなくなる。仲間も現実に対応していく中、思い悩んで大学病院を辞め、北杜夫の『どくとるマンボウ航海記』にあこがれていたものですから、ちょっと船医をやってみ ようと思つたんです。北洋鮭鱒母船に3力月、その後、南極海底地質調査船に4力月。これは4週間船に乗ったらオーストラリアで1週間休みがあるといういい仕事だつたんですが、南極海の船上で、当時話題になっていたェリザぺス?キューブラー?ロスの『死ぬ瞬間』（1971年、読売新聞社)を読んだのが現在の出発点です。そこに描かれた「穏ゃカゝな死」は、それまで自分も当然のように行ってきた蘇生術や人工呼吸とはあまりにもかけ離れていて、猛反省した。人が亡くなる時間を医師や看護師ががんばる時間ではなく患者さんと家族との時間に返そうと。実際、蘇生術をしますかとご家族に聞くと、ほとんどが断られたのです。もう一つは告知の問題。がんなどの告知はタプし視されていた時代で、自分の人生なのに病名も病気についても何も知らされずに亡くなっていく人も多力りた。もし病気のことを知っていれば違う人生を送れたかもしれないのにそれができなかった。事実を知ったうえで自分の人生を生きようとする人を支える仕組みが病院にはないと実感しました。このことは『病院で死ぬということ』(1990年、主婦の友社)に書き、たくさんの方に共感していただきました力、模索しているうちにホスピスケアに出会い、聖ヨハネ会桜町病院の新しいホスピス病棟の立ち上げに参加しました。